静岡市の市街地の中心部にある浮月楼は、創業明治24年の地元では有名な日本料理の老舗料亭です。
浮月楼の歴史は古く、明治維新後に徳川慶喜公のお屋敷として20年、その後は静岡の迎賓館として120年、静岡の街とともに歩んできました。
明治2年、前将軍・徳川慶喜公が、謹慎の御身を水戸から静岡に移される際に、元の代官屋敷に手を加え、遷居され、20年間を過ごしました。
慶喜公は政治からは一切遠ざかり、平安神宮を手がけた小川治兵衛の作庭によるも池泉回遊式の庭園でくつろぎ、自転車や狩猟など多彩な趣味を楽しみながら過ごしたそうです。その後、東海道が開通するに先立って、明治20年に静岡市葵区西草深に転居しました。
慶喜公が転居された後は、いったんは静岡市が払い下げを受けましたが、翌年、市内の資産家が購入し、庭も建物もそのままで明治24年に料亭「浮月亭」として開業。しかし、開業の翌年、明治25年の火事で慶喜公の住んでいた屋敷は焼失してしまいましたが、新築復興し、庭園の美を看板に、東海の名園「浮月楼」と改めました。
その後、明治から昭和にかけて歴史に名を残す西園寺公望、井上馨、伊藤博文など元勲の方々や多くの文人に愛された浮月楼ですが、昭和15年の静岡大火、昭和20年の戦災により、建物は全焼してしまいました。
現在の庭園はほぼ昔の佇まいですが、灯篭のいくつかは火災により火にさらされた跡が残っています。
今では、とても市街地の中心部とは思えないほどの静寂の中で、慶喜公が愛した庭園を眺めながら、旬の素材を活かした伝統の日本料理を味わえる隠れ家的な存在となっています。 |